子宮蓄膿症におけるアリジンの使用
概要

子宮蓄膿症の発症は中年齢以降に多く、全身性感染症として緊急性の高い疾患の1つです。緊急性と疾患の特性から、基本的な治療は外科となりますが、さまざまな理由により外科的な治療が困難な場合や希望されないことがあります。
いくつかの内科的な治療法の中で、『アリジン』という比較的新しい薬を投与する方法があります。
内科治療薬
- プロスタグランジン製剤(ジノプロストほか)
- プロスタグランジンF2α(PGF2α)
- 黄体後退作用
- アグレプリストン(アリジンAlizine,Virbac)
- 抗プロジェステロンレセプター
副作用
- プラスタグランジン製剤…体温低下、嘔吐、下痢、呼吸速拍、血圧上昇、心悸亢進、子宮破裂
- アリジン(アグレプリストン)…注射部位の局所炎症
症例
アリジン10mg/kgの皮下投与を2日連続で実施。その他、静脈点滴や抗生剤など支持療法を必要に応じて実施。
症例1 | ラブラドールレトリバー(8歳3ヶ月・25.4kg)
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症例2 | ジャックラッセルテリア(2歳4ヶ月・5.9kg)
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症例3 | シェルティー(14歳・13.2kg)
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症例4 | グレートピレニーズ(14歳)
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症例5 | 雑種(13歳・13.8kg)
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症例6 | 雑種(13歳3ヶ月・14.1kg)
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症例7 | ミニチュアダックス(5歳9ヶ月・4.3kg)
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結果
投与前の排膿の有無 | 反応までの日数 | エコー上での貯留液消失 | |
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症例1 | なし | 2日後 | 11日後 |
症例2 | あり | 1日後 | 9日後 |
症例3 | あり | 1日後 | 17日後 |
症例4 | あり | 2日後 | 確認できず |
症例5 | あり | ー | ー |
症例6 | あり | 1日後 | 10日後 |
症例7 | あり | ー | ー |
今回の症例では、2症例で反応が見られなかったが、残り5症例では投与後に陰部からの排膿の増加が見られた。
アリジン投与による副作用は見られなかった。アリジン投与による現疾患、既往症の悪化などもみられなかった。
考察
今回の症例では、アリジンの有効性と、その安全性の高さが確認できた。
反応が見られなかった症例5は、卵巣腫瘤の所見があった。
同じく症例5は、発情中の発症であったことから、発情休止期および妊娠の初期で最高値に達するであろうプロゲステロン濃度が、通常の子宮蓄膿の個体よりも低かった可能性を考えた。
今回のアリジン投与では問題なく使用することができたが、内科療法は再発の可能性があるため、十分なインフォームドコンセントが必要である。
すぐに手術へ入れない状態の症例にも、状態改善までの手段として安全に使えるのではないかと思われます。
ご紹介した症例は当院における臨床症例の一部であり、全ての症例に適用されるものではありません。また、記事の内容は掲載時のものであり、現状と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。
この記事の更新日:2013年10月31日